東京高等裁判所 昭和48年(ネ)1231号 判決
一、当裁判所は当審における証拠調の結果をあわせ考えても、被控訴人製品(イ)号(別紙第一目録記載の支承体)、(ロ)号(別紙第二目録記載の支承体)がそれぞれ本件実用新案、本件特許発明の技術的範囲には属さないものと判断する。その理由は、次のとおり訂正補説するほか、原判決理由第一の一、二、第二の一から四までの記載と同一であるから、これを引用する。
(一)、原判決三三丁表末尾行から三四丁裏八行目「ないのみならず」までを次のとおり改める。
「そして成立に争いのない甲第一一号証、同第一二号証、乙第五号証の一から四までによれば、本件実用新案の登録出願前古くから繊維混入硬質ゴムが存在し、これがまた支承体としても広く用いられていたこと、これに伴う当業者の技術常識からすれば、本件実用新案公報の説明欄にあげられた硬質ゴムとは繊維混入硬質ゴムを排除するものとは解されない。また本件実用新案において半硬半軟質ゴム層の両面に結着すべき層については、登録請求の範囲の項はもちろんその他の説明においても端的に部材としての「鋼板」を記載し、鋼板以外のものに全く触れず、また鋼板の技術的意義として引張力その他何らの定義づけもしていない。
そうすると、結局本件実用新案においては、物品の構造・組合せとして、半硬半軟質ゴム層の両面に密着させる物を鋼板として特定・限定しているものとするのが相当であり、鋼板を用いない物の構造・組合せにかかる被告製品(イ)号は、すでにこの点で本件実用新案の技術的範囲に属さないというほかはない。
原告(控訴人)は被控訴人(被告)製品(イ)号の繊維混入硬質ゴム層は本件実用新案の鋼板と均等物である旨主張するけれども、本件実用新案においては前記のとおり支承体の部材として硬質ゴムないし繊維混入硬質ゴムを考慮に入れこれを検討した結果半硬半軟質ゴムとその両面に密着させる物の部材として鋼板を選択したもので、したがつて繊維混入硬質ゴムは除外したものということができる。のみならず、」
(二)、原判決三四丁裏一〇行目(実用新案登録原簿謄本)の次に「および弁論の全趣旨」を加える。
(三)、原判決三五丁裏七行目「この認定に」以下一〇行目までを次のとおり訂正する。「被告製品(イ)号は軟質ゴム層とその上下面の板状体(1)の繊維混入硬質ゴム層の双方に加硫剤をふくみ、加熱加圧の方法により加硫して一体的に結合されたものであるから、相互のゴム分子間の橋かけ結合により化学的結合が行われることが原審証人井口篁の証言によつて認められ、本件実用新案における鋼板とゴムの焼付のような異質分子間の結合とは物理的にもかなり性質を異にすることが明らかである。このように繊維混入硬質ゴム層は本件実用新案における鋼材とはその作用効果においても差異がある。均等の主張はとうてい採用することができない。」
二、そうすると、控訴人らの本訴請求は、その余の判断をするまでもなく、いずれも失当であり、これと同趣旨の原判決は正当であつて、本件控訴は理由がない。
〔編註〕本件に関する目録は左のとおりである。
第一目録
(イ)号図面の説明書
一 名称 梁の支承体
二 図面の簡単な説明
(イ)号図面は、本件梁の支承体を示すもので、第一図は縦断正面図、第二図は回転変形状態を示す縦断正面図、第三図は剪断変形状態を示す縦断正面図である。
三 構造の説明
本件梁の支承体(3)は、梁例えば橋梁、橋桁その他の建設物(5)と橋台、橋脚その他の前記建設物の支台(4)との間に介装されて使用される可動支承体であつて、加硫剤を含む軟質ゴム配合物よりなる板状体(2)の上下面にそれぞれ加硫剤を含み繊維を混入している繊維混入硬質ゴム配合物からなる板状体(1)を積層し、加熱加圧の方法により加硫して、厚さ八ないし一六粍の軟質ゴム層(2)とその上面部および下面部に一体的に結合された厚さ五ないし一〇粍の繊維混入硬質ゴム層(1)とからなるものである。
<省略>
第二目録
(ロ)号図面の説明書
一 名称 梁の支承体
二 図面の簡単な説明
(ロ)号図面は、本件梁の支承体を示すもので、第一図(A)、(B)は縦断正面図、第二図は回転変形状態を示す縦断正面図、第三図は剪断変形状態を示す縦断正面図、第四図は回転および剪断変形状態を示す縦断正面図である。
三 構造の説明
本件梁の支承体(13)は、梁例えば橋梁、橋桁その他の建設物(8)と橋台、橋脚その他の前記建設物の支台(9)との間に介装されて使用される可動支承体であつて、加硫剤を含む軟質ゴム配合物からなる複数の板状体と、前記板状体の間に介在する加硫剤を含み繊維を混入している繊維混入硬質ゴム配合物からなる板状体と、これらを上下からはさむ上記の如き繊維混入硬質ゴム配合物からなる板状体を積層し、加熱加圧の方法により加硫して、厚さ八ないし一六粍の複数の軟質ゴム層(1)と、該各軟質ゴム層(1)と一体的に結合された厚さ五ないし一五粍の繊維混入硬質ゴム層(2)と上部軟質ゴム層の上面部および下部軟質ゴム層の下面部に配設された繊維混入硬質ゴム層(2)´とからなり、各層は板状体をなして互いに結合する。なお、前記中間における繊維混入硬質ゴム層の代りに厚さ約四粍のナイロン板を使用するものを含む。
<省略>